2016年1月21日木曜日

第19回コースミーティングを開催しました。



「我が国における肥満指標と冠動脈石灰化(CAC)との関連について」

 循環器疾患のリスク因子の1つである肥満は世界中で増加し続けており、その増加には歯止めをかけることが不可欠である。
肥満の基準には様々な指標があり、現在米国・日本では、肥満の診断基準としてBMI、メタボリックシンドロームの診断基準としてウエストが使用されている。肥満指標として何が最も有用か、というのは国内外で多数議論はされているものの、未だ結論は出ていない。また、各肥満指標と潜在性動脈硬化との関連を 検討した疫学研究も、欧米・アジア諸国で報告はされているが、依然議論の余地がある。
そこで、欧米諸国と比べると、肥満・動脈硬化の分布が著しく異なる日本において、日本人男性一般集団における、肥満指標と潜在性動脈硬化の指標である冠動脈石灰化(CAC)との関連を横断的に検討することを目的とした。

 SESSAに参加した4079歳の日本人一般住民男性1094人を対象とし、肥満指標は腹囲、腰囲、BMIWHRWHtRの5つを用いた。CACAgatston法を用いて定量的に評価し、カットオフポイントをCACスコア>0とした。
各指標の四分位とCAC>0との関連を、ロジスティック回帰モデルを用いて交絡因子を調整し分析した。さらに、各肥満指標1標準偏差(SD)上昇あたりのCAC陽性に対するオッズ比(95%信頼区間)を、ロジスティック回帰モデルを用いて算出した。

 すべての指標において、交絡因子調整後も各指標の値が増加するに従い、CAC>0に対するオッズ比が有意に上昇する傾向をみとめた。高血圧の有無、糖尿病の有無、トリグリセリド、HDLコレステロールを調整後は、これらの関連がやや減弱する傾向をみとめた。
各肥満指標1SDあたりのCAC陽性に対するオッズ比を求めた結果、WHRがやや低い値であったものの、それ以外の各指標間で大きな差は見られなかった。

 先行研究からはWaistWHRが潜在性動脈硬化と強く関連する指標として挙げられることは多いものの、一致した結論というのは未だ出ておらず、また東 アジア圏における報告も少ないため、更なる検討が必要であるのが現状である。本研究においては、いずれの指標もCAC陽性リスクに強い関連を示し、指標間 に優劣をつけるほどの差は出なかった。そのため、日本におけるメタボリックシンドロームや肥満の診断においては、測定の簡便性の面からみても現行通り WaistBMIの使用が適している可能性が考えられる。

                            杉本 裕子【第4学年】