2015年11月18日水曜日

第17回コースミーティングを開催しました。

「細胞遊走因子ケモカインCXCL14の血球系培養細胞に対する影響」

ヒトの免疫系が正しく機能するために必要な白血球の遊走には、ケモカインというタンパク質が大きく関与している。本研究で解析を行うCXCL14は、同じCXCファミリーで多彩な現象に関与するCXCL12が持つ細胞遊走活性を、そのレセプターであるCXCR4に競合的に結合することで阻害すると報告されている。しかし、その反証となる結果も別のグループから報告されていて、これまでのところCXCL14に特異的なレセプターは同定されていない。したがって、CXCL14がどのような機能を持つのか未だ正確には解明されていない。そこで本研究では、CXCL14による刺激によって引き起こされる細胞内の反応を見出すことを目的とした。最初の試みとして、由来の異なる3種類の細胞株(ヒト骨髄性白血病細胞株K562、ヒトT細胞性白血病細胞株Jurkat、ヒトB細胞性白血病細胞株BALL-1)を用いて、2種類の方法(細胞遊走活性の定量化と細胞内F-actin形成の定量化)でCXCL14が細胞応答を引き起こすか検討を行った。まず、細胞遊走活性を調べたところ、CXCL14はJurkatとBALL-1の運動能を抑制した。また、JurkatとBALL-1に対してCXCL12が示す有意な細胞遊走活性はCXCL14が共存した場合に、促進されることが明らかとなった。次に、細胞内F-actinの定量化実験では、CXCL14はJurkat、BALL-1細胞、K562の細胞内のF-actin量を増加させた。これらの結果から、CXCL14が数種類の細胞株に対して、細胞の運動能を抑制する可能性、CXCL12による細胞遊走を調節する可能性、細胞内のF-actinの重合促進あるいは脱重合抑制にはたらく可能性が示唆された。引き続きF-actinの重合や脱重合に関与するタンパク質のリン酸化や、細胞の形態変化に及ぼすCXCL14の影響についての解析を予定している。また、他の細胞種を用いた検証についても順次行う予定である。

                                            田中 雄也【第3学年】