今回の発表では、これまでの研究と学生生活の両立について、研究をしていてよかったことについてなどの話を交えながら、2014年8月17〜21日に米国アラスカ州で行われた国際疫学会にて「Cross-sectional
association between sedentary time and body mass index in Japanese population:
the NIPPON DATA 2010(日本国民における平静に過ごす時間とBMIの関連)」の演題でポスター発表をした際の報告を行った。以下に研究テーマの背景と研究結果の概要について述べる。
私が研究指導していただいている社会医学講座公衆衛生学部門では、循環器疾患の予防について国内外の研究者との共同疫学研究が行われている。循環器疾患は、日本人の死因の上位を占めており、循環器疾患の予防法を明らかにすることは、日本人の健康増進のために不可欠である。また、循環器疾患の発症に影響を与える食生活や運動などの生活習慣は、個人の努力によって変えることができるため、まずどのような生活習慣が循環器疾患の予防に役立つのかを明らかにする必要がある。
循環器疾患の発症に肥満が悪影響を及ぼすこと、また座って過ごす時間が長くなると肥満のリスクが上がることについては、各国で研究が進められている。しかし、欧米とは疾病構造が異なり、肥満の割合が少ない日本国民を対象とした研究は少ない。
そこで、日本全国から無作為に抽出された300地区で行われた2010年国民健康・栄養調査と並行して実施されたNIPPON DATA2010の対象者(成人男女2829名)の調査データを用いて、日本国民の平静に過ごす時間とBMIの関連について、性別に統計解析を行った。(NIPPON DATA 2010の詳細:http://hs-web.shiga-med.ac.jp/study/NIPPONDATA2010/)
解析の結果、平静に過ごす時間の平均時間は、男性(5.8時間/日)の方が女性(5.2時間/日)よりも長く、平静に過ごす時間とBMIの関連は、女性において有意に正の関連を示した。従って、平静に過ごす時間を減らすことによって、BMIを減少させ、健康に有益な効果を与える可能性が期待できる。
今回の学会発表に際して、学生が研究できる環境を整えていただいた研究医コースの方々と、日々研究指導をしていただいた公衆衛生学部門の先生方に感謝申し上げます。
大橋 瑞紀【第5学年】