今年度の4大学リトリートは、11月29日から30日に、福井駅近くの福井城のお堀端にあるフェニックスホテルで、福井大学の定先生のお世話で開催された。
初日の2、3年生の口頭発表では、本学からは石田君が、2日目の4~6年生の発表では黒田さんがそれぞれ発表した。1日目のポスターセッションでも、本学から5つの演題が出され、説明者はしっかりと説明し、ディスカッションも活発であった。2日目の昼食後のワールドカフェ形式でのディスカッションもそうだったが、多くの学生が互いに出会えるようにプログラムされていて、これがこのリトリートの目的でもあった。学内でのミーティングとは異なり、他学の学生に意見を聞くというのは、学生同士とはいえ、適度に緊張のレベルが上がり、発表した学生には貴重な機会であった。
招待講演も人選も学生の要望で決めており、なかなか良い組み合わせであった。大変スケールの大きな、基礎研究の王道とも言える坂野仁先生の講演と、臨床から研究に入った、医学部らしい山下潤先生の講演は、ともに大変刺激的であった。特に山下先生は、自分史をたくさん語ってもらえて、学生には大変インパクトがあったようである。坂野先生は本質をついた研究をすることを強調され、その最適の実例を示されたと思う。免疫研究から神経科学に転向されたことから、免疫系と嗅覚神経系の意外な類似性と差異を明らかにされた。allelic
exclusionがリンパ球だけでなく、嗅神経細胞でも起こっていること、リンパ球では抗体やTCRの多様性の創出は遺伝子再構成の順列組み合わせによるが、嗅神経細胞の場合は、遺伝子再構成ではなく、1000種類の受容体を持った急神経細胞の突起が束になり嗅球に投射することによってできる、2次元デジタル画像(嗅覚神経地図)によって、無限に近いパタンを識別しているという。この全貌が明らかになるまでの10年以上の研究の過程を語っていただいた。そして、学生とのコミュニケーションは深夜におよぶ懇親会まで続いた。
リトリートのプログラム終了後には、福井大学の高エネルギー研究センターや基礎医学研究室のラボツアーも企画され、ツアーには学生、教員合わせて22名が参加した。ものすごいペースで質の高い論文を生産されている研究所では、PETやサイクロトロン、実験室の見学、標識化合物の生成過程について説明を受けた。研究所やラボでは教授ご自身により説明していただいた。
大変充実した2日間であった。