平成26年度のMD研究者育成プログラム・全国リトリートが、3月21日の昼前から22日の午前中まで、神戸のポートアイランドで、日本解剖学会と日本生理学会の合同大会のプログラムに組み入れられた形で開催された。今回は5年間のこのプログラムの最終年度であり、5年間の成果をアピールするリトリートであった。本学からの教員の参加枠が1名であったので、私が代表して参加させていただいた。まずポスター発表が合同大会と同じ神戸国際展示場で、続いて学会のメインホール(!)で学生の口頭発表が行われ、隣接するホテルに移動して夜は懇親会であった。翌日は学生と教員による講演が3つ続いた。どれも大変充実していた。
特に、国際会議場のメインホールでの学生の口頭発表は見ものであった。プレゼンテーションも良かったが、それ以上に質疑応答がすばらしかった。まず、マイクの前に質問者の列ができる。普段私たちの参加している学会でもなかなか見られない光景である。そして質問内容も鋭いものが多く、プレゼンの内容をよく理解していることが分かる。
2日目の講演は、5年間の締めくくりにふさわしい、MD-PhDを修了後学部に再入学してこの春国試にも合格して卒業し、初期臨床研修を開始しようとしている人と、卒業直後に海外で大学院へ進学した人であった。本学のAプランとBプランに相当する。今回のリトリートで他学の教員とも話していて、本学のCプランの発想が乏しいことに驚きを覚えた。あえてパワーの必要な道を行こうとしている・・・PhD-MDに進んだ人の主張は、大学院は自分のテーマを掘り進めるために行くのではなく、論文を書けるようになるためにいくのだと考える。そして大学院を修了し、論文を書けるようになってから臨床実習に入ることによって、研究を経験した目で臨床の中から自分でテーマを探すことができると。通常の大学院は、与えられたテーマから入り、自分にaffinityがあるかどうかは、一か八かの賭けになるという。
最後の締めくくりは、東京大学の清水孝雄先生の「研究医となること-その苦しみと喜び」。脂質生化学の分野で教科書を書き換えるに至る具体的な研究の話の最後に、「成功に自惚れるな、みんなのおかげだ。失敗にめげるな、研究の9割は失敗だ」という言葉があった。最後に清水先生の学生へのメッセージを抜粋して、この報告を締めくくりたい。「学生時代に研究室を訪れ、一定期間、実験を体験すること。そこで、生活している研究者と接すること。できれば国際学会に出て、初歩的な発見でも良いので発表すること。また発表者にいろいろ質問すること。こんな体験を持てたら、君たちの将来の選択肢が増えると思う。」