合臓器生理学教室での研究内容
神経幹細胞の増殖及び神経分化におけるKlf5の機能解析
神経幹細胞の増殖及び神経分化におけるKlf5の機能解析
滋賀医科大学
医学科5回生
黒田 杏理
最近、iPS細胞など幹細胞の話題が世間をにぎわせていますが、私は神経幹細胞に興味を持ち、神経発生の研究を行っている統合臓器生理学講座で登録研究医コースに登録いたしました。現在、Klf5(Krüppel Like Factor 5)遺伝子の初期発生における神経幹細胞への影響を解析する研究に参加しており、2013年11月には、このような内容に関して米国のサンディエゴで行われたSociety For Neuroscienceという2万人以上の参加者を集める最大規模の学会でポスター発表を行いました。
Klf5はショウジョウバエのKrüppel遺伝子のホモログであるKlf familyの一員です。この遺伝子群にはiPS細胞の山中ファクターの一つとして有名なKlf4が含まれます。Klf familyは発生や分化、形態形成、増殖、発癌、炎症、組織の再生などさまざまな機能があり4、Klf4はiPS細胞やES細胞で自己複製や未分化性の維持に関与します。Klf5も共同研究者である本学動物生命科学研究センター依馬教授らの研究で、ES細胞における未分化性維持や自己複製、着床などに重要な役割を担っていることが分かってきました。私達は、これらの因子と機能代替性を有するKlf2も併せて、Klf2/4/5の初期発生や神経幹細胞での機能を研究してきました。中でもKlf5が大脳皮質の神経幹細胞の未分化性維持に最も重要であることを見出しました。
以上の研究をin vitroでの実験系を中心に行ってきましたが、今後、in vivoでの実験を行い、これまでの研究の裏付けとなるデータの蓄積や、こうした現象に関するKlf5のより詳細な機能や役割のメカニズムを明らかにすることを目的として実験を進めていきます。秋のSFNの学会では、最新のデータを報告するつもりです。
なお、統合臓器生理学講座ではKlf5に関する研究以外にも、DNAの脱メチル化機構、未分化神経幹細胞誘導機構、神経幹細胞の維持・分化、オリゴデンドロサイト誘導、ストレスと神経幹細胞、成体脳神経幹細胞と情動、糖鎖と幹細胞機能など神経幹細胞や神経発生に関する様々な研究を行っています。興味のある方は、是非、統合臓器生理学教室に遊びに来てください!!